勝訴判決後に支払いがされない場合の請求、回収方法を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.勝訴判決後に支払いがされない場合は?

民事裁判で「勝訴判決をもらえれば回収できる」との誤解も多いです。

相手が応じない場合には、回収のために、さらなる動きが必要です。

今回は、勝訴判決後の流れを解説します。

この記事は、

  • 勝訴判決をもらったが被告が払わない
  • 裁判を起こす前に回収までの流れを確認したい

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.5.23

 

勝訴判決後の被告の対応

お金の請求をする訴訟等を提起し、勝訴判決をもらったとしても、それだけでお金が回収できるわけではありません。

敗訴した相手方が、その判決にしたがって、素直に払ってくれれば問題ありません。

しかし、現実には、判決に納得しなかったり、支払えないなどと言って支払をしないこともあります。

収入や財産があっても支払ってこないこともあります。

 

勝訴判決後の請求書

まず、民事裁判では、被告にも裁判所の判決は届きます。

ただ、裁判所の手続としては、それで終了です。

被告にお金を払わせたりすることはありません。支払を命じる紙の判決が届いて終了になります。

被告が判決を受け取り、「支払わなければ」と考え、積極的に支払をしてくれれば良いです。しかし、被告には、支払に関する情報もありません。どのように払うかの情報もないのです。

原告に対する支払をしようにも、支払先の預金口座を知らないこともあります。

被告から積極的に原告に連絡を取り、「判決にしたがって支払います。どこに払えばよいか教えてください」と言ってくれれば良いのですが、そういう事件は少ないです。

そこで、まず、原告からは、判決に従った請求書などを作り、被告に送ってみるのが良いでしょう。

遅延損害金などの計算をして、判決に基づく金額を出し、こちらの送金先口座などを記載して送ってみる方法です。

被告が、「支払うのは仕方がない」と考えているのであれば、請求書により口座情報を得られるので、支払われることがあります。

もちろん、電話、LINEなどでやりとりをしている関係なら、他の手段で連絡することは問題ありません。

 

勝訴判決後の強制執行

請求をしても払われない場合には、強制執行をするか検討することになります。財産の差し押さえです。

確定判決等に基づき、裁判所を使って財産を差し押さえる手続です。

上記のとおり、民事裁判の手続きとしては、判決で終了となります。

財産を差押えたいという場合には、別事件として、差押えの申立をする必要があります。

そうすることで、別手続きが始まります。

 

強制執行には財産の特定が必要

強制執行は、財産の差し押さえ手続です。

この手続では、具体的に、「この財産」を差し押さえてほしいと申し立てます。

そのため、財産を特定する必要があります。

この不動産、この動産、この支店の預金口座、この職場での給料のように特定する必要があります。

差し押さえ手続では、財産ごとに手続が異なり、それぞれ費用がかかります。

 

財産調査と差し押さえ

相手の職場を知っている、メインバンクを知っているという場合なら、財産を特定できるので、有効な強制執行ができるでしょう。

これに対し、そのような情報がない場合には、財産を調査するかどうか検討します。

財産を調査せず、何となく、勘で差し押さえをすることもできます。

たとえば、相手の自宅の近くに支店がある預金口座を複数差し押さえてみるという方法です。

債権回収会社も使っていた手法です。債務者からの相談で、いきなり差し押さえ命令が届き、複数の預金口座が押さえられた、ただ、自分は、その銀行に預金口座を持っていない、という相談がありました。

これは、債権回収会社が適当に複数の預金口座を押さえた結果です。

このような差し押さえをした場合、差押命令は銀行に届きます。口座がなかった場合、銀行からは、「この人の預金口座はありません」という回答がされることになります。空振りです。

勘が冴え、偶然、その支店に預金口座があれば、残高を差し押さえ回収することができます。

ただ、その時点での預金残高なので、数百円ということもあります。この額だと、ヒットしたものの、差し押さえのための費用にも足りないという結果です。

 

判決後に弁護士会照会手続してから差し押さえ

判決後に、弁護士会照会手続を利用して財産を調査し、特定してから差し押さえをする方法があります。

主に預金口座の差し押さえに利用されています。

預金口座を差し押さえるためには、原則として銀行と支店を特定する必要があります。

弁護士会照会手続は、企業等に対して持っている情報を開示するよう照会をかける制度です。23条照会とも呼ばれます。

弁護士会によっても違いますが、費用として1回につき、往復の郵便代、送金手数料等も考慮すると、1万円弱かかります。

大手の銀行の中には、確定判決後、「この被告が預金口座を持っているか、持っているなら支店はどこか」という弁護士会照会手続がされれば、回答するところがあります。

このような銀行であれば、この弁護士会照会を使うことで、支店の特定までできます。

その後に、裁判所に預金の差し押さえを申し立てることができるわけです。ここまですれば、少なくとも、「預金口座自体がありません」という空振りは避けることができます。

ただ、残高まではわからないので、差し押さえがヒットしたけど、残高が少なく費用倒れになるということはありえます。

 

弁護士会照会手続きでは、以前は、生命保険の協会宛に照会をかけ、複数の保険会社での保険の有無を教えてもらえたのですが、この制度がなくなり、個別に保険会社に照会をかけなくてはならなくなり、活用されにくくなりました。

 

 

民事執行法の財産調査

相手方の財産を調査するため、民事執行法では、財産開示手続情報取得制度も設けられています。

以前は財産調査のための方法として、弁護士会照会くらいしか案内できていなかったのですが、法改正により、財産開示制度や情報取得制度も多少は使えるようになりました。

情報取得制度では、金融機関に対し、口座を持っているかどうか、支店はどこかの情報を取得できます(養育費等の一部の債権では社会保険料情報から職場を調べることもできます)。

しかし、財産開示手続は被告の回答を求める手続です。相手が応じないことも多いです。

また、情報取得制度は画期的かと思いきや、申立をする際、1箇所ごとに費用がかかるので、複数の金融機関から情報を取得しようとすると、それなりの費用がかかります。弁護士会照会とさほど変わらない構造です。

 

差し押さえの法改正

 

 

強制執行での差し押さえの申立

強制執行を申し立てると決めた場合には、勝訴判決の判決書等のほかに、裁判所から執行文という書面をもらいます。

裁判所に申し立てて、判決書正本に添付してもらうのです。

執行文付与という手続です。執行文は、申立て時点で執行力を有することを公に証明した文書です。

判決等については、裁判所書記官が付与します。

加えて、強制執行には、判決正本が被告にしっかり届いたという送達証明書も必要です。

 

自分で無理やり回収はNG

勝訴判決があり、被告に対して権利があるのに支払わないからといって、自分で強行的に回収することはできません。たとえば、相手の家に行って勝手に物を処分するような行為は違法です。犯罪にもなりかねません。

自力救済禁止と呼ばれます。

 

差し押さえで赤字に

強制執行・差し押さえにも、このように費用がかかります。

自分で申立をしても、それなりの実費がかかりますし、弁護士に依頼すれば、裁判とは別に費用がかかるのが通常です。

被告の資力が乏しい場合には、回収に動いたものの、赤字になってしまうことも出てきます。

裁判での判決とはいえ、現実にお金がないところから回収するのは難しいのです。

 

 

裁判上での和解による回収可能性

勝訴判決後の回収では、このように事実上、難しいことも多いです。

そこで、裁判を起こした後、裁判上での和解を成立させることも多いです。裁判官からの和解勧告がされることも多いです。

一般論ではありますが、相手の資力が十分ではない場合、判決で支払うよう命じられるより、裁判上での分割払いの和解などをしたほうが支払ってくる可能性が高いと言われます。

和解は、お互いに譲歩したものとされ、納得感があるため、被告も支払に応じてくる可能性が高いと言われるものです。

支払可能性が上がるのが和解のメリットとも言われます。

 

 

勝訴判決と自己破産

勝訴判決等が出て請求しても回収できない、強制執行の申立をしても回収できないような事件で、相手が自己破産をすることもあります。

相手が他にも借金があり、返済不能という状態で財産もないのであれば、法的に支払義務をなくそうという動きです。

自己破産などをされてしまうと、法的に非免責債権とされるような権利でなければ、免責されてしまい支払義務がなくなってしまうことになります。

相手が支払不能になる原因として、ギャンブル等の免責不許可事由がある場合には、その主張を破産手続きでしていき、意見書を提出する方法もあります。

 

 

勝訴判決後、時機を待つという選択肢

勝訴判決が出たものの、現時点では、被告に財産がない、あまりに請求しすぎると自己破産されそうという場合、時機を待つこともあります。

とりあえず強制執行は保留にしておき、相手の就職などで勤務先情報が取得できたり、預金口座が確認できてから申立をする方法です。

被告の親がなくなり相続財産が入った、相手が結婚して家を買ったなどの動きがあれば、そのタイミングで強制執行をすることもできます。

このような時機を待つ強制執行では、判決で認められた遅延損害金の請求もできます。

ただ、判決で認められた債権でも、10年で消滅時効となってしまうため、時効になりそうな場合には、これをリセットするための裁判を再度起こす必要はありますので、しっかり時効管理をしておく必要はあります。

 

 

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