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FAQ(よくある質問)

 

Q.リース契約の解約、解除、クーリングオフはできない?

リース契約を解約したいという相談は多いです。

リース契約は、原則として中途解約できない性質です。クーリングオフは、非事業者である消費者を前提にした制度なので、事業上のリースでは使えないのが原則です。

とはいえ、悪質リース商法などでは救済される可能性もあります。

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.4.23

 

リース契約とは?

リース契約では、契約上、3者が登場します。

1対1の契約よりもややこしい関係になります。

当事者としては、ユーザー(使う人)、リース会社、サプライヤー(販売会社)と呼ばれます。

この3者間で複数の取り決めがされ、全体のリース取引が成立します。

多くの場合、ユーザーは、サプライヤーから勧誘を受け、リース会社との間でリース契約をします。ここが、リース取引の中心的な内容です。

 

通常のリース契約の内容

通常、ユーザーとリース会社の間のリース契約では、次のようなことが決められます。

リース会社がサプライヤーから対象物件を購入し、ユーザーに使用を認める。

所有権はリース会社。

リース契約は、リース期間中の途中解約はできない

注意点

保守・修繕はユーザー負担。

物件の滅失、毀損等の危険負担や瑕疵担保責任もリース会社は負わない。

リース期間満了などにより、リース契約が終了した場合、ユーザーは対象物件をリース会社に返還しなければなりません。リース標準契約書では、返還費用もユーザー負担とされています。

ここで、再リース契約ができることもあります。

 

サプライヤーの売買契約

3当事者間の契約は、他にも出てきます。

リース会社とサプライヤーとの間では、売買契約がされます。リースの対象物件をリース会社がサプライヤーから買う契約です。通常の売買契約とは異なり、リース契約との関連性が強い契約になっています。リース会社自体は、リース物件を手元に置くのではなく、ユーザーに渡すことになります。

ユーザーは借受証を交付し、ここで物件の所有権が移転するとされます。また、対象物件にリース物件であることを明示させたりもします。

リース契約関係図

リース契約と保守契約

ユーザーとサプライヤーとの間で保守契約がされることもあります。

リース自体の前提としては、勧誘をしてくるサプライヤーとユーザーとの間の直接契約は本来予定されていませんが、保守が必要な物件だったりすると、ここで保守契約をすることがあります。

複合機などでは、このような契約がされることが多いです。また、保守契約自体を別会社とすることもあります。

その場合、ユーザーはリース物件を利用する対価として、リース会社(リース料)とサプライヤー(保守料)の両方に支払いが発生することになります。

 

リース契約は中途解約ができない

一般に言われるリース契約では、中途解約ができません。契約時には注意が必要です。

リース会社は、サプライヤーから対象物件を買い取っています。

それを、ユーザーに使用させています。もう買ってしまっているので、簡単に中途解約されると大きな損失が発生しまうのです。

中途解約をするような場合には、残リース料の一括払いなど解約金が高額になるのが通常なのです。

 


リース物件の欠陥も解約理由にならない

リース契約は中途解約できない性質であるところ、対象のリース物件に欠陥があっても、原則として解約はできないものです。

一般的なファイナンス・リース契約書には、欠陥や瑕疵があっても「リース会社はその責任を負わない」という条項があります。

上記契約の性質から、リース物件を売却したのは販売会社なので、物件の質までリース会社は責任を負えないという主張です。

このような契約構造なので、リース物件の欠陥や、販売店からの勧誘時の虚偽の説明などを理由にリース契約を解約したいということは簡単にはできないのです。

このような場合でも、理論上は、リース会社相手に、リース契約の解約を求めるのではなく、リース料相当額の損害を受けたとして、販売店に損害賠償請求をすることになります。

リース会社を巻き込んでの解約となると、交渉で解決できる例は少なく、裁判になることがほとんどです。

 

リース契約とクーリングオフ

リース契約を中途解約できないのであれば、クーリングオフすればよいのではないかと考える人が出てくるかもしれません。

クーリングオフは、訪問販売等で一定期間であれば無条件に契約を解除できるルールです。

ただ、これは、消費者保護のための制度です。

そのため、事業者間の取引では、使えないのが原則です。

サプライヤーの営業マンの強引な訪問勧誘を受けた場合でも、事業者が契約をしたのであれば、解除できないのが通常です。

リース会社もこれを前提にしています。

このような仕組みを前提としたのが悪質リース商法なのです。

 

悪質リース商法・虚偽説明、説明不足

サプライヤーの営業マンが虚偽の説明をしたり、説明義務に違反することで、ユーザーが誤解し、後に問題になることがあります。

虚偽説明としては、

「現在お使いの電話機は、もうすぐ使えなくなります」
「現在の複合機より、節電で、電気代が安くなります」

など複数のパターンがあります。このような事実がなく、「だまされた」と相談に来るケースです。

リース契約自体は、リース会社とユーザーの間の契約なので、ここでサプライヤーの言動が、リース契約にどう影響するかが問題になってきます。

しかし、そもそも、このような勧誘文句が契約書に記載されておらず、言った・言わないの問題となり、裁判でも立証できないことが少なくありません。

リース契約への影響については、上記のとおり、リース契約は欠陥があってもその責任をリース会社が負わないのが原則になる構造です。

虚偽説明自体の立証と、リース契約に与える影響という2つの問題をクリアしなければならなくなるのです。

悪質リース商法

空リース問題

このような問題をさらに悪用したのが、空リース問題です。

空リースとは、リース契約を締結し、リース会社からサプライヤーに代金が支払わるものの、実際にはユーザーのところにリース物件が納入されないという方法です。

リース物件がないので、空(から)リースと呼ばれるのです。

空クレジットでも同じように使われることがあります。

ユーザーとリース会社の契約は、リース料を支払うというものなので、原則として、ユーザーはリース料の請求を拒絶できません。

このような空リースは、販売店からの勧誘を受け、ユーザーも共同しておこなったとされてしまうことが多いです。販売店では、リース料は負担するとか、キックバックするなどと勧誘があり、これに応じてしまったところ、リース料の負担は最初だけ、販売店は逃げる、残ったリース料を支払い続けなければならなくなるというものです。

リース会社からすると、販売店とユーザーが共同でリース料金を騙し取ったという構造になっているので、争いにくい構造なのです。

 

サプライヤーの倒産

悪質リース商法の勧誘をしてくるサプライヤーは、ときに倒産してしまうこともあります。

倒産前に、強引な勧誘で最後の売上をあげようという動きのこともあります。

リース契約は、リース会社とユーザーとの契約ですので、サプライヤーの倒産は、契約の当事者ではないことになります。

しかし、現実には、リース契約の勧誘は、リース会社ではなくサプライヤーが行い、保守管理契約をしていることもあります。

リース期間中にサプライヤーが倒産しても、リース期間内はリース料の支払い義務が続きます。

ユーザーとしては、想定していたよりも不利益な契約になってしまうのです。

 

形だけのリース契約

悪質リース商法の中には、リース契約とは名ばかりの契約もあります。

たとえば、ホームページリース商法です。

リース物件の対象として、サーバーやソフトウェアを設定するものの、実質的には、サプライヤーがホームページの作成や保守管理をするという契約です。

勧誘文句も、リース物件についての説明よりは、ホームページを作成することのメリットや、上位表示、集客効果をうたうなどのものです。

このような勧誘を受け、ソフトウェア等のリース契約をする、サプライヤーとの間でホームページ作成等の契約をするというものです。

ホームページが作成されなかったり、上位表示ができなかったり、サプライヤーが倒産したりして、使えないソフトウェアだけが残るというパターンです。

このように、リースの対象物件自体に価値を感じていないのに、一体と考えた契約をすると、サプライヤーの対応によって不利益を受けることになります。

知識がない中小企業や、商店街などの団体が被害にあった事例があります。

 

リース契約時の注意ポイント

まず、リース契約のデメリットを知っておきましょう。

Q.リース契約のメリット・デメリットは?

 

また、悪質リース商法が存在することを知っておき、即決はしないようにしましょう。

勧誘された、その場で契約書類を作成しないことが重要です。

契約書

営業マンの中には、キャンペーンなどを持ち出し、「今、契約してもらえればオトクです」と勧誘してくることもありますが、リスクが大きすぎるので、このような誘導に乗らないようにしましょう。

書類は一旦預かり、精査してから作成するようにしてください。

高額すぎるリース契約もよく問題になります。リース物件が必要だと考えるなら、相見積もりは取るようにしましょう。

 

悪質リース商法被害発生後の対策

すでに、リース商法の被害が発生してしまった場合には、裁判等の対策も考えられます。

この前提として、法律の原則では、リース会社との契約解消やリース会社に負担させることが難しいという構造にあることは頭に入れておきましょう。

そのうえで、裁判例等でとられている対策には、2種類あります。

 

クーリングオフなどの消費者救済法を利用する方法です。リース契約自体を解消するための動きです。

上記のとおり、原則、事業者では、消費者の救済のために用意されているクーリングオフ、消費者契約法は使えません。ただ、事業者といっても個人事業で小規模な場合、非事業者と変わらないとして、これらの適用を認めた裁判例もあります。

そのような方向で争うものです。消費者救済法が使えないので、民法の一般原則である錯誤、詐欺などを理由に、リース契約の効力自体を争う方法もここに含まれます。これらの主張は、より認められにくい位置づけです。

 

次に、サプライヤーである販売会社に対する損害賠償請求などです。リース会社との契約解消ではなく、その負担額を虚偽説明などを理由に、販売会社に責任追及する選択です。詐欺全開の悪質リース商法の場合には、サプライヤーの倒産、逃亡などで回収が難しいケースも多いですが、まともな会社で営業マンが暴走して勧誘時に虚偽説明したケースなどでは、こちらで被害回復ができる事例もあります。

 

 

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